テキスト版
広報いなぎ
令和4年1月15日号 4-5面


      
新春鼎談 稲城のにぎわい創出 わたしたちの手でできること
煖エ 勝浩(たかはし かつひろ)×中村 燈(なかむら あかり)×田中 学(たなか まなぶ)
地元稲城で活動することへの想い
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─お二人は稲城ご出身ということですが、どのような想いで地元稲城での活動をされているのでしょうか。
田 中
最初は活動後の飲み会が楽しかったが…
現在、ペアリーロード稲城商店街の会長を務めています。これまで私が手掛けてきた事業の中で、一番大きなものといえば稲城長沼駅前でのビアテラスです。イベントには2千人以上の方が来場し大盛況でした。
また、個人的に好きな事業としては、商工会青年部20周年事業として開催した婚活事業で、その後商店街の主催事業としても2回開催しました。婚活事業では、おいしい食事やワインを取り揃えるなど、参加者全員が満足できる企画を毎回考えています。
当初は、事業後の飲み会が楽しみで商工会青年部や消防団の活動をしていましたが、東日本大震災の際に、稲城青年会議所(以降JC)の支援活動に参加したことで、地域活動の考え方が大きく変わりました。
中 村
地域活動はわが子と一緒に!
幼少期に坂浜で過ごした後、一旦稲城を離れましたが、2013年に戻りました。その時に幼馴染からJCに誘われたのですが、0歳の子どもを抱えており、活動できるかどうか悩みました。その時、思い出したのは、私も小さな頃、子供会などの役員だった母によく会議などに連れて行ってもらったことでした。そこには地域の大人たちがいて、とても可愛がってもらいました。それで、地域活動であれば子どもがいても良いのかなと思い、加入しました。
JCは地域活動を始めたきっかけです。私が理事長に就任した当時、ちょうど話題になり始めていた「子ども食堂」を稲城でもやりたいと思い、地域の居場所づくりとして「子ども食堂」をやろうと決めました。
また、JCの充て職として準備会から関わっていた姉妹友好都市交流協会は、JCを引退した今も理事として参加しています。
田 中
「地元」稲城は活動拠点
年代によって稲城への関わり方は大きく変化しています。20代は理容師の修行で10年間横浜に住んでいました。30歳で稲城に戻り、現在は結婚をして国立市に住んでいますが、生まれ育った「地元」という気持ちは強く持っており、それは私の揺るがない背骨であり、活動の拠点となっています。
長年活動していく中で「地域を盛り上げる」ということが、少しおこがましく感じていて、それよりも、目の前にいる人を笑顔にしたいと思うようになりました。その
「人」とのつながりの先にあるものが、郷土愛なのかもしれません。
中 村
人と人とがつながるまち
今、学さんから「拠点」という言葉が出ましたが、私もまさに稲城は拠点だなぁと思っています。稲城は小さな市で、何かイベントがあるとそこには知り合いがいて、つながりを感じます。お店もそうです。ここオルトラーナさん等、素敵なお店がたくさんあって、行くとそのお店の人にも会えるし、人と人とのつながりが強いまちなのではないかなと思います。
どこへ行っても気持ちよく活動を受け入れてくれる土壌があり、そこに自分の役割ができると居場所になります。稲城は人と人とがつながりやすいまちだと感じています。
市 長
地域の二面性
今日のテーマは地域活動や地域愛といったものだと思いますが、今お二人からは違う角度から見る地域性のお話がありました。
ひとつは中村さんのおっしゃる通り、稲城は面積的に小さいのに加えて、人口もそこそこであることは稲城の特徴なのかなと思います。日頃、地域で会っている人の顔と名前が分かる、そういった意味で稲城はコンパクトシティです。PTA、民生委員など、様々な地域活動が「稲城」という単位で一つにまとまり、密接な活動ができる地域性なのかもしれません。
それから、田中さんのお話は、違う角度から地域性を捉えていると思います。戦後、自分の住む地域をあまり良く言えない時代がありました。それは「謙遜することが美学」といったものと混同しており、もっと自分の地域にプライドを持っていいと思っています。最近、観光面でよく使われる「シビックプライド」という言葉があります。「シビックプライド」とは、主体的に自らのまちづくりに関わって、良くしようと考えながら、共に活動していくことです。他人事でなく、誰かがやっていることをただ自慢するのでなく、いい言葉だなと感じました。これは観光面だけでなく、全ての活動に通じる部分があります。
 今お二人が問題提起された地域性の両面が、シビックプライドにつながればいいなと思っています。
田 中
最期に伝えたかったこと
私は両親の跡を継いで稲城で理容店を営んでいるのですが、ここ数年、地域の大先輩である元自治会長さんや地元企業の社長さんが、不思議と亡くなられる1年前くらいから来店されるようになり、髪を切りながらご自身の地域での活動や地域への想い等を話してくれるのです。
その時は「いい話を聞けたな」くらいにしか思っていませんでしたが、いざ亡くなられると遺言のように感じて…そういう先輩方の想いも背負いながら、いつも活動をしています。
中 村
世代を超えたつながり
私が盛んに地域活動をするようなってからも、なるべく子どもと一緒に会議などに参加しています。地域の皆さんと久々に会っても、子どもはたくさん声をかけてくれることで安心しますし、地域が子育てに協力的であるのは、私にとっても良いことです。そうやって世代を超えてもつながれると良いなと思っています。
市 長
世代を超えるというのは、一つのキーワードかも知れませんね。今、他の地域では徐々に失われつつあるような形が、稲城にはまだ残っているのはありがたいものです。


コロナ禍での活動
─この2年間の生活は新型コロナウイルス感染症の影響が大きかったかと思います。ご自身の活動や心境の変化なども含め、お聞かせください。
中 村
コロナは充電期間
2017年にスタートした子ども食堂事業は、「みんなで作ってみんなで食べよう」というコンセプトで活動をしているので、コロナウイルスが広まっている状況ではどうしても活動ができません。2年弱お休みをしていますが、今は充電期間だと考えています。ただ、きちんと感染症対策をとれば大丈夫であるということも分かってきました。多くの方が楽しみに待っていらっしゃるので、このまま感染者数が減っていれば、ぜひ活動を再開したいです。
市 長
中村さんの活動には本当に頭が下がります。子ども食堂というと、食事を買ってきてそれを提供するイメージがありましたが、クッチィナではほとんどが手作りで、家庭の雰囲気の中で活動されています。ぜひ続けていただけるように応援したいです。
田 中
できない理由よりできる理由を
コロナ禍の活動に関しては、私の活動というより市長の決断に大変感銘を受けました。稲城市では、成人式などコロナ禍では難しいとされる行事を開催され、「できない理由より、できる理由を見つける」という市長のお考えにとても共感しています。今後、商店街のイベント等も、何とか「できる理由」を探して活動できればいいなと思っています。


これからの稲城を見据えた事業展開
─稲城で事業展開するにあたり、まだまだ課題なども多いとは思いますが、今後のご自身の活動予定などをお話しいただけますでしょうか。
田 中
次の世代へバトンを
私は今年で45歳になりますが、年齢的なものを考えると、次の時代を担う子ども達に何か伝えていかなければならないなと考えていたところ、商店街の会長として三小の3年生の、総合の授業に関わることになりました。この授業では商店街の歴史や今後の課題などについて調べてもらっています。私は子ども達に、「2030年の商店街未来マップ」を作ってほしいとお願いしていて、3学期にその発表があります。
その未来マップを市長や国会議員の方にお届けすると約束をした瞬間、子ども達の目が変わりました。これまで学校の勉強として何となくしていたものが、私の言葉をきっかけに「自分事」となったのです。今、子ども達はみんな本気になって未来マップを作っています。
市 長
もし良ければ、市役所の市長公室でプレゼンをやってもらえないでしょうか。
田 中
嬉しいです。きっと子ども達も喜んでくれると思います。子ども達が地域を作る当事者になったことは、市長のおっしゃっていたシビックプライドの根幹となるのではないでしょうか。自分達が地域を作っているという当事者意識を、今回は小学生ですが、これから幼稚園・保育園生から大学生まで巻き込み、私たちのまちづくりに一人でも多くの「当事者」を増やすことが大切だと考えています。「自分」がやりたいと思う気持ちも大切ですが、いかに次の世代にきれいにバトンを渡していくか、ということが地域活動の大きな目標です。
中 村
大人も子どもも世代交代
稲城版子ども食堂クッチィナいなぎを2017年に立ち上げて以来、ずっと固定のスタッフでやってきました。しかし、長く続いているコロナ禍で、そのスタッフの子ども達も大きくなり、直接自分の子どものメリットになるか微妙になってきています。今、大きくなった子ども達にどうクッチィナに関わってもらい、下の子ども達を育てられるかが課題です。また、新しいスタッフを入れた方が良いのではないかと思い、今後、事業説明会などをする予定です。少しずつでも良いので、もっと周りを巻き込めるよう変えていきたいなと思っているところです。
また、姉妹友好都市事業ですが、交流協会も立ち上がりましたので、大空町や相馬市、野沢温泉村をはじめ、初の海外姉妹都市のフォスターシティ市とも、顔と顔を交えたイベントを立ち上げたいと思っています。
市 長
市民交流のプラットフォーム
世代交代については、どこへ行っても課題ですね。固定化すると次の世代が絶えてしまいます。自分が動けるうちに、次に引き継ぐ人を育てて、いい具合の時にその人にバトンタッチをして抜けないといけないと思いますが、なかなかそれは難しいところです。
私は市長に就任して以来、市民活動サポートセンターや姉妹友好都市交流協会、ペアテラス等、市民活動のプラットフォームとなる仕組みを構築してきました。市民の皆さんには、それらをうまく利用していただき、他地域との市民交流を図っていただければと思います。外部と交流すると、自分の地域を再発見することもありますし、それはお互いのシビックプライドにつながります。
来年度、コロナが落ち着いていれば、フォスターシティ市から20から30人規模の訪日団が来られる予定です。その後、今度は稲城市からの訪米団を結成して、私も市民としてぜひ行きたいです。あまり堅苦しい交流ではなく、カリフォルニアワインを飲みに行くぐらいのノリで行けたら面白いですね。
田 中
ワインを飲みに、いいですね!ぜひフォスターシティ市までご一緒させてください!
▽問い合わせ 秘書広報課広報広聴係

      
Commentator
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中村 燈
稲城版子ども食堂クッチィナいなぎ代表
稲城市出身、公益社団法人日本獣医師会職員。稲城青年会議所第42代理事長を経て、稲城版子ども食堂クッチィナいなぎを立ち上げ、地域の居場所づくりに邁進する。
現在、市民活動サポートセンターいなぎ・稲城市姉妹友好都市交流協会などの理事を務める。料理と乗馬が得意な三児のママ。

田中 学
理容師・ペアリーロード稲城商店街会長
稲城市出身、HairsalonTanaka代表。ご自身の理容室が所属するペアリーロード稲城商店街の会長として婚活事業・ビアテラスなどを手掛ける。現在、第V期稲城市
男女共同参画計画推進協議会の委員を務める。クラフトビールとワインをこよなく愛する二児のパパ。

会場/ORTOLANA(オルトラーナ)
今回の鼎談で使用させていただいたのは、市内のレストラン「オルトラーナ」さんです。イタリア語で菜園風を意味する「オルトラーナ」。市内や近隣地域のお野菜を積極的に使って、地産地消を目指しているレストランです。
▽問い合わせ オルトラーナ(大丸965) 電話 042-407-5659

▲オルトラーナの皆さんと