テキスト版
広報いなぎ
令和3年1月15日号 4-5面


      
新春鼎談
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高橋 勝浩(たかはし かつひろ)

種田 匡延(たねだ まさのぶ)

YOSSAN(よっさん)

クリエイターたちが語る 稲城の観光
コロナ禍でも、精力的に活動されているお二人にお話を伺いました。稲城の観光の展望は─

【鼎談(ていだん)】三人が向かい合って話をすること。

▽問い合わせ 秘書広報課広報広聴係、経済観光課観光係

      
稲城の観光への思い
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─お二人は日々どのような思いで情報発信や活動をされているのでしょうか。

種田
皆さんの‘ふるさと’をつくりたい
稲城は、地元にいながら山も川も楽しめるのが魅力です。稲城に引っ越してきて初めて大丸用水を散歩した時、何て水がきれいで豊かな町なのだろう、と感動しました。この体験は、稲城の魅力をもっと探して、市民の皆さんにも再発見してほしいと思うきっかけとなりました。
矢野口駅のイルミネーションイベント「きらきらフェスタ」を、初めて開催した時のことです。そのイルミネーションを隣で見ていた若者から、「どうせ稲城だよな」という言葉が聞こえてきました。それは自分の町を卑下しているような気がして、とても憤りを覚えましたが、逆にもっと地域を盛り上げたいとも思いました。
子ども会や青少年育成地区委員会などの活動では、子どもは増えているのに活動は停滞しており、どうしたら良いのか悩んでいました。その時、「自分達は、子ども達に稲城を‘ふるさと’と思ってもらえるように活動しているのだ」という言葉を仲間から聞いて、腑に落ちました。キャンプ・盆踊り・塞の神など、子ども達の‘ふるさと’の思い出をつくることが、地域の大人達の役割なのだと思いました。
私の出版業という仕事でも、市民の皆さんに自分の住む町を‘ふるさと’と思ってもらえるような情報や知識を届けたい、と考えています。

YOSSAN
イラストレーションの語源は「光」
私は5年ほど前に、稲城に引っ越してきました。「いいえいなぎです」(下プロフィール参照)の展示会をここペアテラスで開催した時、自分の中で‘サブリミナルいなぎ’というテーマがありました。これは「稲城」を連呼して、多くの方の耳に届けることが大事かなと思い、企画したものです。また、作品を稲城市内だけでなく、日本・世界に発信し外部へ伝えていくことは、稲城市に何か還元できるのではないかと考えています。
「イラストレーション」という言葉は、イルミネーションやルミナリエと語源が同じ「光」であり、「明快にする・明るくする」といった意味があります。稲城は輝いているものがたくさんあり、それを皆さんにお届けすることがイラストレーターの役目だと感じます。稲城でのお仕事でも、それぞれをどう輝かせていくか、アピールの仕方などを一緒に考えました。症状を聞き、治療法を考えて処方箋を出す…イラストやデザインはお医者さんのお薬と同じではないでしょうか。

高橋
「稲城で観光」の原点
お二人は市外出身ということですが、私も共通の思いがあります。お二人は稲城の良さを客観的に見られていますが、地元の方が地域の価値をあまり理解していないことは、とても疑問に感じていました。
大学を卒業し勤めた稲城市役所では、ほとんどの職員が他の自治体と比べて劣っているという自己評価を持っており、不甲斐ない思いでした。それ以来、私は稲城を良くして発信したい、という思いを持ち続けていました。
私が市長になるまで、「稲城で観光」と言う人は一人もいませんでした。最初は奇異な目で見られましたが、徐々に知名度が高まり、最近では「稲城の観光事業は活気があって頑張っているね」といった評価もいただいています。
観光は町おこしにとって大切な要素であり、色々な手法を使って、稲城を‘ふるさと’と思い、定住型で世代交代ができる町になっていけば良いと思います。

種田
「商ってよし」の町づくり
現在、第二次稲城市観光基本計画に携わっていますが、やはり観光は町に賑わいを生み出すものであるべきでしょう。この計画に「住んでよし、訪れてよし」という基本理念がありますが、誰のため・何のための計画か考えると、そこに「商ってよし」を加えてはどうかと思います。「稲城で商売をすると良さそうだ」ということで、お店や事業を始める人が増え、それが町の賑わいにつながる良い循環をつくっていきたいです。

YOSSAN
稲城はコミュニティがしっかりしていますし、地域で活動している方の顔が見え、声を掛け合える関係でとても活動しやすいです。

      
コロナ禍でも観光
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─コロナ禍でも精力的に活動されているお二人ですが、ご自身の活動や心境の変化なども含め、お聞かせください。

種田
コロナ禍であってもなくても
稲城には素晴らしいお店がたくさんありますが、なかなか市民の方に知られていない面もあります。そういうお店を紹介して、皆さんにお気に入りの店を見つけてもらおうと考えたのが「グレーピア」であり、カレースタンプラリーやパンまつり等のイベントです。コロナ禍であってもなくても、みんなが力を出し合って市内経済を活発にしていければと思います。

YOSSAN
大きな光と小さな光
私は稲城のことを作品で表現しアピールしていますが、アピールし続けることは次につながりますので、コロナ禍でも必要だと思っています。
今回、アマビエをモチーフにした「イナビエ」をつくり、発表しました。それをテレビで楽しく取り上げていただいたことで、そのバッジを買いに初めて稲城に来た方もおられ、市内の楽しいお店を紹介させていただきました。この経験で、稲城を継続的にアピールすることが観光につながることを実感しました。
さきほどイラストレーションの語源を「光」とご紹介しましたが、観光も「光」を「観る」ということです。大きな光を観るのか、小さな光を観るのか様々で、華やかな娯楽施設にたくさんの人で行く観光もありますし、大丸用水のアジサイがきれいだから観に行ってホッとする、といった観光もあります。稲城にはそういったスポットがたくさんありますので、見せ方を工夫して皆さんにお伝えすることも大事だと思います。

高橋
市民主導の観光事業
三沢川の桜並木や大丸用水など、まさにYOSSANのおっしゃる小さな「光」をイメージして観光事業を考えています。
市では現在、北緑地公園でキッチンカー導入を試行しています。コロナ禍で家に缶詰めになっている時、近くの公園に行って、キッチンカーでご飯を買って食べるだけでも、簡単に特別感が得られます。日常の中での観光は長続きしますし、結果的に、それが地域経済を回す呼び水となれば嬉しいです。
観光事業を進めていく中で思うことは、ある程度採算性をとりながら、市民主体・企業主体でやった方がうまくいくのではないか、ということです。皆さんが楽しく続けられ、それを発展させるために行政がサポートする、といった関係がお互いウィン・ウィンではないでしょうか。

      
稲城の観光の展望
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─稲城市が観光を進めるうえでどのような課題があり、どう解決していくべきか、それぞれの活動予定なども交えてお聞かせください。

種田
新たな市民活動のかたち
「グレーピア」等の取材を通じて、稲城は市民の活動がとても活発なことに驚きました。今後も人口が増え続けていく中で、これまで中心となって活動してきた方々が高齢化して世代交代を迎えるとなると、新しい地域活動や市民活動のかたちを作っていく必要があると思います。
私は、自分の好きなことや得意なこと、興味のあることで、市民の皆さんが積極的に地域へ関われるのが一番良いと思います。そうした活動を続けていくうちに、自分の住む町に愛着が生まれるのではないでしょうか。

YOSSAN
「INAGINE(イナジン)」構想
これまで「いいえいなぎです」やカレンダー等で稲城市のアピールをしましたが、稲城市民一人ひとりの応援にはなりませんでした。そこで考えたのが「INAGINE」構想です。「INAGINE」という名前を一人ひとりに付け、生きているだけで素敵で輝けるような何かを皆さんと考えたいです。
個人的な課題としては、「いいえいなぎです」等で稲城をアピールしようにも、稲城市非公式ですので、アピールしづらい部分があります。そこで、稲城市にある非公式のキャラクター等を集めて、何か楽しい企画をすることも考えています。

高橋
「いいえいなぎです」が使えない?!
町おこし事業をやっていく上で、種田さん無しではできないかもしれません。引き続き、楽しみながら活動を続けていただきたいです。また、観光協会という大きな器ができましたので、市民の様々な事業をバックアップする体制を整備していければと思っています。
ところで、稲城市の非公式であるから市役所では宣伝できないといった、YOSSANからのお話は聞き捨てならないですね(苦笑)。せっかく稲城を宣伝していただいているので、それをどう取り込んでいくかを考えていきたいです。例えば、広報いなぎに遊び心をもって「いいえいなぎです」を取り込んでいくとか、個人の活動を紹介する「INAGINE」のコーナーを作る等、今後は楽しい企画をどんどん考えたいですね。

      
commentator
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編集者・プランナー/種田 匡延

立川市出身、市内在住。出版・編集制作・イベント運営を行う株式会社インターメディアリーを経営。地域情報誌「グレーピア」や稲城を紹介する単行本の発行、カレーやパン、音楽などのイベント開催に携わる。稲城市観光基本計画策定委員会、稲城市都市計画審議会、稲城市青少年問題協議会の委員を務める他、学校支援コンシェルジュ、青少年育成矢野口地区委員会、穴澤天神社奉賛会など地域活動にも精力的に関わっている。

絵本作家・イラストレーター/YOSSAN(梅田 智子)


兵庫県出身、市内在住。デザイナーとして会社に勤務後、独立。稲城市マップのイラスト、稲城観光パンフレットのデザインを担当する。稲城市の地図の形を様々なものに見立てて表現した「いいえいなぎです」(下図)のグッズや「稲城から世界へ」をテーマとしたカレンダーを自主制作。市内で子ども向けのワークショップも多数行う。「NHKのうた」の楽譜表紙など、各種出版物のイラストや絵本を手掛ける。

      
会場/いなぎ発信基地ペアテラス
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 いなぎ発信基地ペアテラスでは、稲城の観光スポットの紹介・特産物の販売など、稲城市の魅力を発信しています。カフェスペースもあり、ゆっくりとくつろぎながら稲城の魅力を感じられます。
▽問い合わせ いなぎ発信基地ペアテラス〔午前10時から午後7時(年末年始を除く)〕 電話 042-401-5786