テキスト版
広報いなぎ
令和2年1月15日号 5面


      
特別対談 誰もが活躍できる社会に向けて
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 このコーナーでは、市内で様々な分野においてご活躍されている方から、市長がお話を伺います。
▽問い合わせ 秘書広報課広報広聴係

市長:
 ようこそお越しくださいました。
 日頃から、薬剤師としてのお仕事の傍ら、地域活動をはじめ、市の様々な行政委員として活動いただき、改めて感謝申し上げます。
江口:
 私は、稲城のニュータウンのまち開きと同時期に市内で薬局を構え、介護保険制度の仕組み作りの段階から関わってきました。1988年に、市内のニュータウンで最も早く入居が開始された向陽台地区では、まち開きから約30年が経過し、今後は、高齢化などへの対応が必要となってきます。
 住み慣れた地域で、誰もが自分らしい暮らしを続けられるよう、地域包括ケアシステムの構築には、医療や介護などの連携はもちろんですが、日頃から、地域での顔の見える関係作りが大切であると考えており、様々な活動に携わっています。

本日は、「男女の社会的な平等」という観点から、意見を交わしてまいりたいと思います。
−−−世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数」において、日本は、149カ国中、110位でした(2018年度報告書)。男女平等を取り巻く、現在の日本の社会状況について、どう感じていますか。
江口:
 この結果を受けて、大変驚きました。女性の活躍が進んできたとはいえ、まだまだ男女間の格差が残っていることが示されました。
 日本には、女性は控えめにというような奥ゆかしさを大切にする考え方などがあって、性別による固定的な役割分担に関する意識を、解消していくことが必要であると思います。
市長:
 この統計結果については、評価項目に目を向け、中身を精査して受け止める必要があると思います。現状、平等に関する議論では、結果に重きを置く流れがありますが、私は、機会・チャンスの平等性を確保することが重要と考えます。
江口:
 結果に至る過程で、平等ではない部分があるのではないかと思います。
 例えば、女性が職場での昇進を望まないケースがあるとして、その背景にある理由に目を向ける必要もあるのではないでしょうか。
市長:
 おっしゃるとおり、男女平等という意識は高まっているけれども、家庭や地域の中では、依然として男女の役割分担が固定的なケースはありますね。
江口:
 家庭においても夫婦が、お互いを個人の人間として尊重する意識と、家事の適切な分担が必要であると思います。
市長:
 市は子育て支援に積極的に取り組んでおり、現在は、保育園の待機児童対策に力を入れています。
 保育園の果たす役割はもちろん重要ですが、保育園制度のみが子育て支援の最善の取り組みであるという捉え方には疑問を感じます。
 都内のある首長は、「女性の出産後、育児休暇を2年間取得できるよう、勤務先に義務づけるべき」という考えを提唱していて、私も賛同します。
江口:
 2年間の育休を義務付けることは、ハードルが高いですが、そうした制度が広まることで、根本的な子育て支援につながるのではないでしょうか。
市長:
 世田谷区では、保育園事業の補完として、稲城市の子ども家庭支援センターが実施する「あそびの広場」を拡充した取り組みがされています。
 子育て中の方の声に、「保育園に預ける程ではないが、幼稚園ではちょっとサービスが足りない」、「時々は保育園に預けたいが、自分でもできる」という声があります。「あそびの広場」は、そうしたニーズに応えるもので、今後、稲城でも参考にして取り組んでいきたいと思っています。
江口:
 子育ての中では、お母さんが悩みを抱え、孤立してしまうケースがあります。集団の環境での保育が充実すると、親同士の交流も生まれてくると思います。親・子、どちらにとっても良い出会い・交流の場として広げられると良いですね。

今後、目指すべき社会について、どのようにお考えでしょうか。
江口:
 女性の活躍を更に推進するためには、家族の支えと協力、また地域や職場での理解が不可欠です。
 女性が、社会の様々な分野で、自らの望むキャリアを重ねるためには、教育という観点も大切です。学びの場での教育だけでなく、企業でも、性別に関わりなく自らの意見を述べられるよう、研修などに力を入れています。
市長:
 「女性管理職を50%に」というような、結果の平等ではなく、性別に関わりなく、自らが望むように選択できる、機会の均等が重要と思います。
 また、社会問題に目を向けると、児童虐待や性犯罪のニュースが毎日のように報道されています。私は、これらの問題の根本原因の一つには、コミュニケーション能力の低下があると思っています。
 社会制度は整ってきましたが、人間同士のコミュニケーションが低下するようでは、制度に逆行する状況が生じるものと懸念しています。
江口:
 コミュニケーション能力の形成については、幼少期の親子の触れ合い、受け取る愛情というものが、やはり大切だと感じます。絵本の読み聞かせ等では、耳から入る情報を頭でイメージすることによって想像力が育まれますし、親子の触れ合いの時間がとても重要です。
市長:
 昨今は、子どもにタブレット端末を与えて、長時間、動画を見せるケースもあるようですが、映像は直接的に感覚へ訴え、目や耳から入る情報を頭で想像し、考える力を弱めてしまう一面があります。
江口:
 身近な絵本や紙芝居を通じて、子どもの想像力を育むことが重要と改めて感じます。コミュニケーションは他者の気持ちを理解し、思いやりのある心や協調性を育みますから、地域活動をする上でも欠かせません。
 自身の経験で、若い頃に上司から大きい仕事を任されたことがあります。自分を信頼し、責任を与えてもらえたことがうれしく、とても印象に残っていますし、今でも私を支えている出来事です。
 人は経験の中で、他者に認められ、信頼されることで成長するものだと思います。失敗も成功も、思いやりのあるコミュニケーションを通して、人間として成長の階段を上っていくのだと実感しています。
市長:
 現代は、情報化の流れにありますが、たとえ意見や考えの異なる人同士であっても、対話を通じて分かり合えるものだと思います。

今後、取り組むべき課題について伺います。
江口:
 昨年の台風19号では、市内でも避難所が開設され、多くの方が避難されました。災害はいつでも起こり得るもので、自分事として備えなければいけないというように、防災への意識が高まっています。
 私が避難の際に最も重要と思うことは、トイレの整備です。トイレを我慢するために、水分や食べ物を控えてしまうと、健康に悪影響を及ぼすことがあります。ぜひ、防災対策においては、女性の視点を政策の中に盛り込んでいただきたいです。
市長:
 防災の取り組みは、時間をかけて段階的に取り組んできております。
 市では、消防本部に防災課を組織し、防災課には女性署員を配置して、防災面での女性の視点に配慮できるよう努めています。
 また、避難所となる小中学校の体育館は、「だれでもトイレ」を整えるなど、整備が進んでいます。
江口:
 市民の防災への関心が高まっている今、防災・減災に向けた啓発に積極的に取り組んでいただきたいです。
市長:
 現在、市では防災マップの更新を進めており、今年度中に全家庭に配布します。避難に関する情報なども盛り込み、充実した内容で発行予定です。
江口:
 新しい防災マップが出来次第これを活用して、地域の防災訓練などで役立てられると良いですね。「自助・共助・公助」という役割分担のもと、私も地域の中で、共助の役割を担っていきたいと思います。
市長:
 私は、目指すべきまちの姿というのは、「自立・自活した市民の民度の高いまち」であると考えます。
 行政は、市民の皆さんの信任・付託を得て、自助でできない部分を公助として担う役割があります。
 自助・共助・公助はバラバラに途切れたものではなく、つながり合っていて、市民・地域・行政、みんながまちづくりの仲間です。
江口:
 社会が成熟していく中で、個人も法人も、性別も関わりなく、自分たちができる分野で役割を分担し合う「協働」の考えが一層進み、誰もが活躍できる社会の実現を期待します。
 私が日頃取り組んでいる、地域での顔の見える関係作りは、福祉の面だけでなく、防災時や災害弱者への対応においても重要と考えています。
 市内のニュータウンエリアもまち開きから約30年近くが経過し、今後は、高齢化への対応が課題となってきます。地域での支え合いのネットワーク作りが急務であると捉えており、その上でも、顔の見える関係を大切にして、今後も取り組んでまいりたいと思います。
市長:
 持続可能なまちづくりを、市民の皆さまと共に進めてまいります。今後とも、市政へのご協力とご参加をお願いいたします。

江口 浩子氏
市内薬局 薬剤師。南多摩薬剤師会、日野法人会、稲城市商工会、国際ソロプチミスト稲城、支え合いネットワーク向陽台に所属。
稲城市の男女共同参画計画推進協議会委員、介護保険運営協議会委員、保健福祉総合計画策定委員会委員など、福祉・教育分野を中心に幅広く、精力的に活動されています。


      
女と男のフォーラムいなぎ2020(第42回)
絵本今昔ものがたり 「らしさ」の描かれ方
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 時代と共に絵本の描く風景は変わっているのか、いろいろな絵本に触れて、考えてみませんか。
▽期日 令和2年2月1日(土曜日)
▽時間 午後1時から午後4時30分(開場=午後0時30分)
▽会場 地域振興プラザ4階
▽定員 100人(申込先着順)
▽申込方法 電話、ファクス、メール〔必要事項 (1) 「女と男のフォーラムいなぎ」 (2) 住所 (3) 氏名(ふりがな) (4) 電話(ファクス番号) (5) 年代〕
第1部 基調講演
▽講師 東條 知美氏(絵本コーディネーター、学校司書)
第2部 トークカフェ(自由参加)
 お茶を飲みながら語り合いましょう。
▽託児・手話通訳など
 託児は1歳から就学前のお子さんをお預かりします(定員5人、申込先着順)。
 要約筆記・手話通訳・点字プログラムは第1部のみ実施します。
※ 託児・第2部の手話通訳を希望する方は、令和2年1月22日(水曜日)までに申し込み
※ 託児は、お子さんの名前(ふりがな)、年齢もお知らせください。
▽企画運営 女と男のフォーラムいなぎ2020実行委員会
▽申込先・問い合わせ 市民協働課男女平等参画係 ファクス 042-378-5677 メールアドレス shiminkyoudou@city.inagi.lg.jp

講師プロフィール
東條 知美氏
 学校司書として勤務する傍ら、絵本コーディネーターとして講演活動・執筆などに取り組む。コンセプトは「子どもに絵本を。大人こそ絵本を。」。

      
募集します 第V期稲城市男女共同参画計画推進協議会市民委員
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 市における計画の進捗状況などについて、意見や提案などをする男女共同参画計画推進協議会の委員を募集します。
▽対象 市内在住・在勤・在学で20歳以上の方
▽活動期間 令和2年4月1日から2年間
▽回数 全10回程度
▽時間 平日夜間2時間程度
▽募集人員 2人
▽申込方法 持参、郵送〔必要事項 (1) 氏名 (2) 生年月日 (3) 住所 (4) 電話番号 (5) 職業 (6) 応募動機・抱負(800字程度、様式自由)〕
▽申込期限 令和2年2月14日(金曜日)
▽申込先・問い合わせ 市民協働課男女平等参画係