デフリンピック対談企画 ー私たちが知ってもらいたい、届けたい想いがあるー
デフリンピック対談企画 ー私たちが知ってもらいたい、届けたい想いがあるー
11月15日から26日に東京2025デフリンピックが開催されます。聴覚障害者の「大会を機に、きこえない・きこえにくい人たちがいることを、1人でも多くの方に知ってもらいたい」という想いを、市民へ届ける市内在住のデフアスリートによる対談企画です。
自分から誤解を解くこと、伝えていくことが重要
岸野 話かけられても気付けなくて、「なんで無視するの?」と言われてしまったことがあります。
松永 通っていた長峰小学校では、声による情報(口話・発話)が中心でした。中学校では、ろう学校に通うことになり、目からの情報(手話・筆談)が中心になり、初めて自分が認識していた言葉が間違っていることに気付きました。例えば、コンビニの「セブンイレブン」は、口話や看板を見て、ずっと「セブンセブン」だと思っていました。感音性難聴の特徴として、あまり聞き取れない部分が似ている発音に聞こえてしまい間違えて認識してしまいます。
岸野 漢字の読み方を間違えることも多く、両親に直されていました。
岸野 そのままだとお互いに嫌な気持ちになってしまうので、自分から誤解を解くこと、伝えていくことが重要だと思い、聞こえないことをきちんと説明するようにすると改善できました。
松永 私の場合は、校長先生が入学式前に何を工夫すればよいかを聞いてくれて、入学式で「聞こえない人がいる」と説明してくれたので、嫌な思いは特にしなかったです。
岸野 飲み会です。文字起こしアプリを使っていても、みんなが話すから誰が話したのか分からないし、変な日本語に変換されてしまう。だから飲み会の時は横や前に障害のことを理解している人に座ってもらうようにしています。
松永 飲み会は楽しく過ごしたいですよね。話の内容がわからないと寂しくなっちゃう。耳が聞こえないことは、車いす等と比べると分かりづらくて、お店でオススメとかを話しかけられても分からず、こちらが聞こえないことを伝えると向こうに行ってしまったりする。どう対応すれば良いか分からないだけだと思うので、私たちもその方法を発信していくことが課題だと思っています。
岸野 僕はアプリをすぐに出すようにしています。
松永 日本は、身ぶり手ぶりで話しかけてくれたりとか、温かい対応をしてくれる所が少ないと感じる場面もあります。伝える方法が分からないのだろうから仕方ないのだけど。
ーーこれまでの経験を語る2人。松永選手は世界選手権2024沖縄豊見城大会の金メダリスト、岸野選手は7人制デフラグビー日本代表のキャプテンを務める。ーー
どんな手段でも、話しかけてくれた時点でもう既に、その「伝えたい」という気持ちがうれしい。
岸野 どんな手段でも、話かけてくれた時点でもううれしいです。ゆっくり話して、伝わらなければ筆談とか文字起こしアプリを使うとかすればいいと思います。
松永 私もそう思います。「伝えたい」という気持ちがうれしいです。
岸野 もちろん一番うれしいのは手話を覚えてもらうことですが(笑)
松永 同感です(笑)
岸野 僕は日本代表のキャプテンなので、外国の選手と話さなければならない立場ですが、海外では聴力障害の軽い選手も多くて、口話(英語)で話しています。僕自身は英語ができないのでジェスチャーを使いますが、海外にはジェスチャーを読み取ってくれるフランクな人が多いと感じています。国際手話を手始めに各国の手話を教えあったりもします。
松永 同じですね。ジェスチャー、国際手話、アメリカ手話、日本手話・・・と、色々介して伝わるか試してみます。話し言葉と同じですね。
2人 できない人が多いです。みんな覚えたいけど、難しすぎて...。
岸野 両親は聞こえます。妹は聞こえない。両親は手話を覚えてくれました。
松永 すごい!お母さんは覚えるけど、お父さんは覚えない家庭が多い。両親とも覚えてくれたのはすごいですね。
岸野 妻も聞こえるけど手話ができて、周りに手話ができない人が少ない環境が幸せだと感じます。友達の場合は、手話はできないけど、自分は口話で話して、友達はスマフォのメモ機能を使って話してくれる。そういった友人にも家族にも恵まれてありがたいです。
松永 私の場合、両親は聞こえます。4人兄弟で聞こえる兄弟と聞こえない兄弟がいますが、みんな基本的に口話で話しています。今はテレビでも、ろう者(生まれつきや音声言語を獲得する前に失聴した聴覚障害者)になったらどうしたらよいか等発信されていて、母も手話を覚えてくれました。友達は、みんなゆっくり話してくれたり、カフェなどの静かな場所に移動してくれたりとか配慮してくれるのがうれしいです。
ーー「伝えたいという気持ちがうれしい」と語る松永選手ーー
私たちも、聞こえる人に話しかけるのは勇気がいる。
岸野 まず、話しかける前に悩まなくても大丈夫です。会話手段も何でもよくて、興味を持ってもらえるだけで、話をして大丈夫なんだと分かってうれしいです。
松永 聞こえないという意識はいらないと思います。困ってたら話しかけるし、伝わらなかったら紙に書いてもいいと思います。私たちも同じように、聞こえる人に話しかけるのには勇気がいります。
岸野 確かに聞こえていないことを知らない人に話しかけるのは勇気がいりますよね。僕は、手話を覚えてから話しかけるのではなくて、話しかけてみて、「僕と話をしたいから手話を覚えよう」と、手話を覚える動機になるような人でありたいと思っています。
岸野 まずは目を合わせて、マスクは外して、ゆっくり話しかける。伝わりづらければこちらも他の方法を提示するので、お互いに伝えやすい方法でコミュニケーションを取れたらと思います。
松永 聞こえない人は視野が広いので、すぐに気付きます。じっと見ているだけでも気づくと思うので、そんなに話しかけるハードルを上げなくても良いと思います。
岸野 この対談で稲城市民の方たちに是非顔を覚えてもらって、会ったときに「あっ」と言っていただけるだけで嬉しく思います(笑)。(取材スタッフに)写真も大きく使ってくださいね(笑)
ーー「手話を覚える動機になるような人でありたい」と話す岸野選手ーー
1人でも多くの市民に知ってもらいたい。社会を変えるのは難しいけど、こういう取組みを継続していくのが大切だと思う。
松永 セブンイレブンでは、レジにボードがあって、袋・スプーンくださいとか、温めてくださいとか言わなくても、指差しでできるようになっている。少しずつ変わっていると感じています。
岸野 そうですね。今までは言わなければダメだったのが、簡単に通じるようになってきた。多様性が言われるようになり、ドラマの『サイレント』とかも話題になって、聞こえない人のことを知ってもらえるようになってきた。それでもまだまだ知らない人もいるので、聞こえない方の生活など、もっと知ってもらえるよう発信していきたいです。
岸野 高校生の時からインタビューで「相互理解」と言っていたけど、いろいろ見てきて、理想に近いと思うようにもなりました。発信しても大きく取り上げてもらえないし、障害のことを知らない人も多い。この対談の企画を通じて、1人でも多くの市民に知ってもらいたい。社会を変えるのは難しいけど、こういう取組みを継続していくのが大切だと思っています。
松永 パラリンピックの知名度は90%ですが、聴覚障害もパラスポーツに含まれていると思われていることが多いです。世の中を変えるのは難しいけど、デフリンピックを機会に、こういった人たちがいるということを知ってもらえるよう発信していきたいです。
岸野 デフリンピックの周知のためだけではなくて、終わった後も発信する機会が必要だと思います。聞こえない人の存在を継続して発信していきたいです。
松永 私もそう思います。デフリンピックが終わると静かになってしまうんじゃないかと少し心配です。
司会 今は全国でも大きなショッピングセンター等でたくさんイベントが行われていますが、デフリンピックで終わってしまわないよう、市でも一緒にやっていきたいと思います。
2人 是非!
岸野 デフラグビーはデフリンピックの種目ではないので、2026年のワールドカップを目標に自分はやっていますが、松永さんだけでなく、他の競技の友達がたくさんいるので、盛り上げるのに一役買えたらと思っています。
松永 6月の世界選手権で優勝しましたが、まだまだ課題も多いです。チームワーク、コミュニケーション、技術・・・ろう者(生まれつきや音声言語を獲得する前に失聴した聴覚障害者)だけど、すごいバレーボールだと見てもらえるように、デフリンピックに向けてがんばっていきたいです。
ーー2人のデフリンピック、ワールドカップでの活躍が楽しみであるーー
デフリンピック周知イベント(稲城市から東京2025デフリンピックを盛り上げよう!)を開催しました。
東京2025デフリンピック=「きこえない・きこえにくいアスリートたちの世界大会」が、令和7年11月15日から26日にかけて、日本で初めて開催されます。これに向け稲城市では、市内在住のデフアスリートをお招きして、周知イベントを行いました。
▼日時
3月1日(土曜日) 午前9時30分から午後0時30分頃
▼場所
稲城市総合体育館(ウェルネスアリーナ)
▼実施主体
主催/稲城市障害福祉課 協力/稲城市聴覚障害者協会
▼講師
(メイン)
松永 彩珠 選手(デフバレーボール世界選手権2024沖縄豊見城大会金メダリスト)
岸野 楓 選手(7人制デフラグビー日本代表選手主将)
(サポートメンバー)
佐藤 愛莉 選手(デフバレーボール選手)
日野 様(デフラグビー連盟理事長)
大塚 様(デフラグビー連盟強化委員長)
竹中 様(デフラグビー連盟)
▼主なイベント内容
(1)市長挨拶
(2)東京2025デフリンピックPR動画視聴
(3)稲城市聴覚障害者協会による手話講座及びクイズ大会
(4)デフアスリートトークイベント
(5)協議体験コーナー
(6)しゅわしゅわ☆デフリンピック!(手話ダンス)







松永選手、佐藤選手には令和7年秋のデフリンピックで、岸野選手やデフラグビー連盟の皆様には、令和8年に日本開催が決まったデフラグビーワールドカップでのご活躍を願い、参加者からも「頑張ってください」などの声が上がりました。
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稲城市 福祉部 障害福祉課
〒206-8601 東京都稲城市東長沼2111番地
電話番号:042-378-2111 ファクス番号:042-378-5677
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