No.5 発刊に寄せて 「一人ひとりの学びの充実を目指して」
(稲城市の教育「イエール」 6月15日 第1号掲載)
発刊に寄せて 「一人ひとりの学びの充実を目指して」
この度、稲城市教育委員会広報紙「イエール」を発刊することとなりました。本市の教育施策全般について、お知らせしてまいります。これまで長年親しんでいただいてまいりました「生涯学習だより『ひろば』」とともに、多くの市民の皆様にご高覧いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
「イエール」とは、「Inagi(稲城)」と「Education」「Learning」を合わせ、さらに「エール」の意を込めたネーミングです。この稲城市において、子どもも大人も皆が、日々新たな学びを実感し、互いの成長を応援し称え合う、そのような学びの輪が広がることを願い、発刊を機に、改めて教育施策を充実してまいる所存でございます。
現在、様々な教育課題が挙げられている中ですが、特に「イエール」に込めた思いを実現するには、一人ひとりの児童・生徒が、日々希望をもって安心して過ごし、学びの歩を進められることが重要であると認識しております。
この課題意識のもと、稲城市教育委員会では、令和6年4月26日、稲城市立学校全教職員を対象に、関西外国語大学教授 新井肇先生をお招きし、「『新生徒指導提要』が示すこれからの生徒指導の方向性」をテーマとした研修会を開催しました。「生徒指導提要」とは、文部科学省の作成による、生活指導に関する学校・教職員向けの基本テキストです。令和4年12月、子どもを取り巻く社会環境の大きな変化等を踏まえ、12年ぶりに改訂されました。この研修会は、今の時代に必要な子どもの見方、子どもへの対し方を学び合うため、「生徒指導提要」改訂作業において中心的役割を果たされた新井先生にぜひご指導いただきたいと、企画しました。
当日は、新井先生から、まず、「新生徒指導提要」は、児童・生徒が抱える課題を踏まえ、「変動社会(VUCAな時代)を生きぬく力の獲得」「増加する多様な背景をもつ児童・生徒への対応」「子どもを守る法の理解」「『働き方改革』と生徒指導の充実との両立に向けた『チームとしての学校』」という四つの課題に対して答えようとしたものであり、子ども達への指導姿勢として、「発達支持的生徒指導」への転換を目指すことが重要であるとのお話をいただき、続けて、以下のことを学びました。
- 「発達支持的生徒指導」とは、全ての児童・生徒を対象に、全ての教育活動において、共生社会の一員となる児童・生徒の成長・発達を支える働きかけを行うものである。
- これからは、「発達支持的生徒指導」を基盤に、対象範囲と課題性の高低に応じ、4層(「発達支援的生徒指導」「課題未然防止教育」「課題早期発見対応」「困難課題対応的生徒指導」)で生徒指導を進めることが求められる。
これらのお話から、「いじめ」「不登校」等の課題について、個々の状態に応じ、どの「層」における、どのような対応が適切であるかを組織的に見取り判断しながら、より実効性のある支援を行っていくことが必要と認識しました。
さらに、「『どうして学校に来ないのか』から『どのような学校であれば来られるのか』への問いの転換」、「直接体験を通じた人間関係づくりの機会の設定」、「『問題行動』とは、『問題提起行動』である」、「『困った子』は『困っている子』」等、貴重なご教示と、「学校が『専門職の学習共同体』となり『チーム学校』により子ども達を支えていきましょう」との力強いエールをいただき、教育の専門職として共に学びながら、子ども達の発達と成長を支えていかなければとの思いを深めました。
さて、稲城市教育委員会では、子ども達が希望をもって安心して過ごし、学びを実感できるような充実を、これまでも図ってまいりました。そのうち、教室に入りにくかったり学校に登校しにくかったりする状態になっている児童・生徒への支援につきましては、次のように取り組んでおります。
まず、個々の悩みに対し、各校において学級担任や生活指導担当教員等、さらに専門職であるスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが、また校外においては稲城市教育センター教育相談室(複合施設ふれんど平尾内)及び教育相談室分室(令和6年度開室)にて心理職の相談員が、そして「教育支援室(適応指導教室から改称)・梨の実ルーム」指導員が、ご相談に対応しております。また、各小中学校ではご希望に合わせ授業のオンライン配信を行い、さらに各中学校には「校内別室」を設置、東京都教育委員会からの「不登校対応加配教員」(稲城第四中学校)並びに「不登校対応巡回教員」(稲城第四中学校以外の中学校)、及び校内別室指導支援員が、個別学習等の指導・支援を行っております。そして、校外の学びの場である「梨の実ルーム」につきましては、以前は市立小学校の一教室に設置しておりましたが、よりゆとりのある施設を活用した多様な学びの充実を図るという構想から、平成27年に現在の稲城市教育センター内に移設しました。この「梨の実ルーム」では、稲城市立学校の校長・副校長経験のある先生方が学習指導要領を踏まえたカリキュラム編成や指導に当たり、個に応じた学習、施設を活用した実技教科や集団活動、校外学習による体験活動等を実施しています。加えて、不登校には個々の状況があることを重視し、それぞれの状況に応じた支援を図れるよう、令和6年度から、教育相談室内に、ご相談先や近隣のフリースクール等の案内をするための窓口機能も開設しました。
さらに、児童・生徒が毎日を安心して過ごすには、学校が「みんなが安心して学べる場所」であることが重要です。そこで令和6年度から、全ての小学校において、「複数担任制」「一部教科担任制」等に、東京都からのそのための教員配置を待つことなく、市独自に取り組んでおります。一人ひとりの児童の状態を複数の教員の視点から見守ることによる適切な支援、児童からの複数教員への相談、各学級や児童に起こった問題や悩みについての複数による対応等を可能とし、子ども達にとって安心できる学校づくりにつながる体制づくりを図っております。
今後もこのような取組の推進を図り、「イエール」に込めた思いを具体的に実現できるよう、工夫し、取り組んでまいります。
稲城市教育委員会教育長 杉本 真紀子
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