高勝寺(こうしょうじ)の観世音菩薩像(かんぜおんぼさつぞう)
高勝寺の観世音菩薩像
坂浜の真言宗豊山派に属する高勝寺には、東京都指定文化財の観世音菩薩立像が安置されています。この仏像はもとは同じ坂浜にあった妙福寺(今は廃寺)の本尊でしたが、廃寺後に高勝寺に移されたといわれます。現在は高勝寺の地蔵堂に安置されています。平安時代後半(12世紀前半頃)の制作と考えられ、常楽寺阿弥陀三尊像とともに、市内では最も古く貴重な仏像といわれます。
この仏像は、欅材を使った一木造りで、像高155.5センチの立像です。台座の上に直立し、右手は垂下して掌を前に向け、左手は前に曲げて蓮華を持っています。頭部は宝髻(まげ)を結い、眼は彫眼で作られています。左肩から右脇にかけて条帛がかかり、天衣は両肩からさがって、左右の腕にかかり、両外側に垂れ下がっています。肉身は漆箔(漆を塗った上に金箔を置くこと)、頭髪・着衣は彩色されていますが、現在はほとんど剥落し、下地がわずかに残るのみです。
構造は頭部体部を一木から彫り出し、内刳り(像内部を刳り取ること)は行われていません。両肘より先、天衣の遊離部、足先、持物は後世の作と考えられます。
一木造りという古い技法で作られていますが、伏目の穏和な表情や浅い衣文線などに藤原時代(平安時代後半期)の特色が認められます。しかし、やや細面であること、両眼がかなり鼻梁(鼻すじ)に接近していることなど、定朝様式(仏師定朝が完成した優美で調和のとれた和様仏像彫刻の様式)とは異るところもみられます。制作年代は、これまで平安時代中期から末期まで、諸説が出されていましたが、一木造りであること、典型的な定朝様式の中に入らないことなどにより、12世紀前半頃と考えられます。
また、観世音菩薩像を収める厨子は、最近の修理で大きな改変を受けているものの、木鼻や中備蟇股の彫刻絵様から、17世紀末から18世紀初頭の建築物と考えられ、観世音菩薩像とともに貴重な文化財と言えます。
高勝寺の本堂
仏像の各部名称
観世音菩薩が安置される地蔵堂
観世音菩薩像を納める厨子(地蔵堂内)