No.141 高校生等医療費助成事業の課題
更新日:2023年11月12日
これまで子どもを対象とした医療費助成事業は、未就学児を対象とする制度(マル乳)と義務教育就学児を対象とする制度(マル子)の二つの助成事業を行ってきました。これらの助成事業は、東京都が財源補助を行い市区町村が実施するものですが、マル乳の制度発足からマル子への対象拡大に至る現在まで一貫して、東京都の補助内容はマル乳が「所得制限有り・自己負担無し」、マル子が「所得制限有り・一部自己負担有り」の制度となっています。
したがって、都制度における子どもの医療費助成事業は「無償化」にはなっておらず、所得制限超過によって対象外となる方に対しては、市区町村の独自の判断により市区町村の一般財源で助成をしている状態です。そのため、自治体の財政力の差によって格差が生じています。
マル乳については、特別区の全てが「所得制限無し・自己負担無し」となっていますが、制度発足時は多摩地区の多くの市が都制度に準拠して「所得制限有り・自己負担無し」となっていました。多摩地区は特別区と比較して財政力が弱く、このことが「三多摩格差」の一つの象徴として長年課題となっていました。その後時間はかかりましたが、各市の経営努力により所得制限が順次撤廃され、現在はマル乳については稲城市を含む全市で「所得制限無し・自己負担無し」が実現されています。
一方、マル子については特別区の全てで「所得制限無し・自己負担無し」となっていますが、多摩地区では未だ多くの市で「所得制限有り」となっています。
こうした状況の中で、市区町村には何ら事前の協議もないまま、令和4年度の予算編成が終了した令和4年1月になって急に、18歳までの医療費助成制度(マル青)を創設する旨が発表されました。都民からすれば、助成は無いよりあった方がいいに決まっていますが、事業費の半分が市区町村の負担となり、しかもマル乳・マル子と同様に所得制限有りの制度が創設されると、三多摩格差が更に拡大してしまうことになります。
新制度導入に当たり、特別区では早々にマル乳・マル子同様にマル青についても区の負担で所得制限撤廃の方針を打ち出しましたが、多摩地区ではそう簡単なことではありません。
都議会での強い要望もあり、令和7年度までの3年間は市区町村の負担分を都が支払うことで決着しましたが、これはあくまで所得制限内の対象者に関するものであり、所得制限超過分に対しては、都は一切負担してくれません。
私も参加している東京都市長会からは強い懸念を伝え、今回これらの課題を解決すべく東京都と市長会の「協議の場」を設けていただくこととなりました。令和8年度以降の財源、所得制限・自己負担の取り扱いのみならず、マル青だけではなくマル乳・マル子も含めた制度見直しを今後協議することになります。
こうした子どもへの医療費助成に関する所得制限撤廃は、稲城市においてもかねてより強い要望をいただいております。東京都との財源交渉の行方を注視しながらも、その結論を待てない状況にあります。
そこで本年6月に開催された市議会第二回定例会において稲城市独自にマル子・マル青の所得制限を撤廃することを提案し認めていただいたことから、来年4月から0歳から18歳の全ての子どもを対象に、医療費助成をすることを決定しました。
今後とも、財源は限られておりますが、未来を担う子ども達の健全育成に傾斜配分できるよう努めてまいります。
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